『オンリーワンのクリニックをデザインし続ける』 平岡建築デザイン
2019.07.03
歯科や皮膚科、内科などクリニックの設計に力を入れている建築設計事務所がある。
大阪の中心部に事務所を構え、依頼があれば全国どこへでも足を運ぶ。『株式会社 平岡建築デザイン』は、平岡孝啓氏・美香氏の夫婦建築家による事務所である。
同社の契機となったのは、2004年に広島県で手掛けた矢野歯科医院。(トップ画参照)
当時はデザインされた歯科クリニックというのは珍しかった。しかし依頼主である矢野歯科医院の院長は「従来のクリニックは働く人の目線で造られていたが、患者目線にならなければならない。医療をサービスとして捉えなおす」との理念を掲げ、患者目線でのクリニック作りに拘ったという。
それを受けて、当時は珍しかった治療室を個室にしたデザインを取り入れ、外観からでも個室があるとイメージできるように、箱が並んだデザインを採用した。平岡氏は、この最初のクリニック建築を通して、クリニック作りに最も重要なのは、「ホスピタリティ」であると気づいたという。
同作品をHP上に掲載したところ、全国各地からクリニックの設計依頼が来るようになっていった。こうして平岡建築デザインはクリニック建築の第一人者としての道を歩み始めたのである。
施主の想いを図面に落とし込む
正式に依頼を受けてから1か月以内にファーストプラン(平面)が完成する。平面ではあるが、そこには設計の要素を組み込んでいる。平面上に立った時に、どんなものが目に入るのか、どんな光が差し込むのか、どんな風が吹くのか。図面には、そこまでを計算に入れたうえで、施主へと提示される。
また、同社は施主との事前の打ち合わせを重視している。デザインは全面的に任せられる場合が多いというが、だからこそ施主が好きなものや嫌いなもの、どういう性格を持っているのか、そして何を目指しているのかを徹底的にすり合わせる。
そのすべてをファーストプランの段階で図面に落とし込み、施主へと提示できるからこそ、ほとんどの施主がその出来に満足して、ファーストプランのまま話が進むのだという。
デザインで重視するのは「壁と天井」
クリニックの設計は一般家庭のそれとは異なり、機能にものすごく縛られてしまう。合理的な導線を確保しなければならなかったり、床に段差を付けてはならなかったり…。そうなれば必然的に、壁と天井の造形要素が非常に重要な意味を持つ。
特徴的な仕切りで診療台を仕切る、小児歯科ならではの工夫。
(横浜ゆうみらい小児歯科・矯正歯科)
木の構造材をあえてむき出しにするデザイン。
(えんどう歯科クリニック)
クリニックでは光を必要とするため、放っておくと照明だらけのデザインになってしまう。照明だらけにならないように間接照明を配置したり、空調設備に一工夫加えたりすることで、いかに天井をきれいに見せるかを追求しているという。
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