『医療とメタルの融合、音楽を通して医療の啓蒙を』メタルバンド「ANATOMY」　ババロアさんインタビュー

医療系メタルバンドAnatomyのボーカルを務め、作詞・作曲までも手掛けているというババロアさん。黒いボンテージに白衣を纏い、ステージ上で堂々とメタルを歌い上げる彼女だが、昼間は形成外科医として働く現役女医の顔も持っている。そんな彼女の医師としての歩みと音楽活動について語っていただいた。

Q．なぜ医師を目指したのでしょうか。
高校生の時に、私が甲状腺がんを患ってしまい、同じタイミングで父が大動脈剥離で倒れてしまいました。いることが当たり前だった親がいなくなるかもしれないという不安を抱えながら、手術が終わるのをじっと待っていることしかできませんでした。医者の先生から「手術は無事終わりました」という言葉を聞いた時、安堵感が押し寄せてきて、医者の偉大さにとても感動したんです。自身の病気のこと以上に、父の病気の経験が私の中では大きくて、私も誰かの不安な気持ちを取り除いたり、病気を取り除いたりしたいと思って、医師を志すようになりました。

Q．現在、興味のある科目はどちらですか。
今は形成外科の専門医をとるために勉強中です。自分の適性や、本当にやりたいことを考え、形成の道に進むことに決めました。
私は細かい作業が得意なのですが、特に縫合に関しては、どれだけ傷口を美しく縫えるかを追求したいと思っています。救急外来で急いでいるときでも、絶対に妥協しないできれいに縫うことを心掛けています。
今は小児の先天異常の治療に力を入れたいと考えており、未来が広がっている子どもたちが、いじめられて自信を無くしてしまわないように、少しでもその子の人生の助けになりたいと思っています。

Q．医者とメタルの両立で苦労している点は何ですか。
それぞれがそれぞれに対して、偏見を持っていますし、多方面で厳しいことを言われることが多いです。
医者から見ると、メタルをやっているなんて不真面目だ、不謹慎だと思われることが多いです。私は、一度決めてここまでやってきた音楽を途中で辞めるわけにはいかないからこそ、この活動を医者としてのスキル向上の妨げにしたくないと思っていて。だから勉強や仕事は誰よりも頑張る気持ちでやっています。あの子はメタルをやっているからダメなんだよと、みんな言いたいでしょうから、それを絶対に言われないようにしたいです。先輩の先生たちは非常に熱心に指導してくださるので、それに応えたいと思っています。
そして、音楽関係者側からすると、医師なら経済的にも恵まれているだろうし、バンドはどうせ道楽なんだろう、本気でやっていないんだろうと言われることが多いです。私の親は医師ではないですし、特別裕福な家庭でもなく、医学部へも奨学金や減免を使い、バイト代を教科書代などの足しにしながら通っていました。バンド活動も専業でやっている方と肩を並べたいという気持ちでやらせて頂いています。そこは口で言っても仕方がない部分ですので、作品やライブを通して結果を出したいなとは思っています。もちろん専業のミュージシャンの方は音楽を専門に勉強されてきた方々ですから、日々みなさんから色んなことを学ばせて頂いています。
なんて言っていますけど、やはり一人では絶対に出来なかったことだなぁと。家族や周囲の方のサポートや理解あっての今の自分だと思っています。
こんな欲張りな活動を、ここまで続けてくることができたのは、周りの皆さんのサポートあってこそ。本当に感謝してもしきれません。

Q．メタルを始めたきっかけは何でしょうか。
高校生の時に初めてバンドのボーカルとして歌ったのですが、その時は演奏に声がかき消されてしまったんです。それがとても悔しくて。だったら逆に周りが爆音という環境に身を置けばよいのではないかと考えました。