
老化は”疾患”に?抗老化治療のこれから
2021.03.29
あらゆる疾患と「老化」との関連性が解かれるいま。老化を疾患だとして治療することができるようになったら、世界はどのように変わっていくのか。近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長を務める近畿大学医学部の山田秀和先生に、抗老化治療の最新動向について語っていただいた。
WHOにより「老化」の定義が見直された
2019年、WHO(世界保健機構)がIDC-11(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems;国際疾病分類の第11回改訂版)を公表しました。現行のICD-10への改訂された1990年から約30年ぶりの改訂となり、より現代社会や医療現場に則した内容となることが期待されます。
医師の皆さんはご存じかと思いますが、ICDとは国際的に統一された疾病・死因の分類のことをいいます。医療機関ではカルテの記載にICDで定められた診断名やコードが用いられ、行政機関では統計調査などに活用されています。世界中の公衆衛生機関から集められたICDの情報をもとにどのような疾患が増えているのかを把握・検討し、産業や医療の予算配分決定の材料としているのです。
残念ながら、現行のICD-10には「老化」という概念は存在しませんでした。しかし、がんやアルツハイマー、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントの多くが、老化により引き起こされると考えられています。老化関連疾患も死因に大きく関与している事実があるにも関わらず、「老化」を示すコードがICD内に存在しないのは問題なのではないかと、ICD-11の作成にあたり見直しがなされました。
今回のICD改定により、疾病分類コードを補助する役割をもつ「エクステンションコード(extension code)」が新設され、そのうちのひとつに「老化関連の(aging-related)」という意味をもつ「ST9T」というコードが作られました。近年老化を病気の一種だと結論付ける研究発表が続いており、加齢や老化についての記載ができるようになったことはとても大きな進歩といえるでしょう。
たとえば現在我々を苦しめているCOVID-19でも、亡くなる方の多くは65歳以上だと言われています。2022年にICD-11が発効されれば、この状況を「TX9T COVID-19」として報告できるようになるのです。同様の報告が多く集まれば、COVID-19とご高齢の方の死亡との因果関係調査に大きな予算を投じる可能性もでてきます。現在、私たちはそうした大きな時代の転換点にいると考えられるわけです。
老化を測るものさし「エピジェネティッククロック」
それでは、このような考え方になってきた経緯にはどういった背景があるのでしょうか。それは一言で申し上げれば「老化を測定できる技術が発達した」ということに尽きるでしょう。
年齢には、誕生から数える一般的な「暦年齢(chronological age)」と、細胞老化の程度からみる「生物学的年齢(biological age)」の2種があると考えられています。全遺伝子のシークエンスを調べ、そのメチレーションレベルから生物学的年齢を割り出す。エピジェネティッククロックは、その指標となる考えなのです。数あるエピジェネティッククロックの中で最もよく知られているのが、スティーブ・ホーバス氏が2013年に発表した「ホーバス・クロック(Horvath’s Clock)」です。
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