『既存治療を補完する選択肢として 培養幹細胞治療の現状とこれから』大宮ひざ関節症クリニック 院長 大鶴任彦先生
2020.10.16
診療科を問わず、幹細胞治療を取り入れるクリニックが増えるなか、治療をより根拠あるものにするべく論文執筆や学会発表に取り組むひざ関節症クリニックグループ。大宮院院長 大鶴任彦先生に、実際の治療の流れから今後の課題までお話いただきました。
保存療法と手術療法の間を”補完する”選択肢として
——変形性膝関節症治療に対する従来の治療法と、先生が取り組まれている培養幹細胞治療との違いについてお聞かせください
変形性膝関節症とは、年齢による変化で軟骨がすり減り、関節内の炎症や痛みが生じる疾患です。加齢や肥満、遺伝子因子などによって発症する一次性変形性膝関節症と、外傷などをきっかけに発症する二次性変形性膝関節症に分類され、患者様の多くは前者に当てはまります。超高齢化社会の日本において深刻な疾患であるといえるでしょう。
変形性膝関節症に対する治療方針は、我が国の診療実態に適合させ、日本版として流布している「変形性膝関節症ガイドライン」を参考としながら、一般整形外科医,または運動器疾患治療に従事する医師によって決定されます。一般的には、変形性膝関節症の初期は安静や薬物療法、運動療法に代表される保存療法、進行期から末期にかけては手術治療が選択されます。しかし保存療法の効果がなく手術治療の希望がない患者様に対して、保存療法と手術治療の間を補完する位置づけとして、近年「バイオセラピー」と呼ばれる治療が提供できるようになりました。今回はそのうちの一つである「培養幹細胞治療」について説明します。
培養幹細胞治療におけるインフォームドコンセントの重要性
——どのような患者に適応で、どのようなことを期待できるのでしょうか
幹細胞は自己複製能や多分化能を有することから、診療科を問わず様々な分野で期待を寄せられています。滑膜や骨髄などからも採取することができますが、当院では、局所麻酔下で日帰りで簡単に採取できる皮下脂肪から採取した幹細胞を培養し、それを膝関節内に注射しています。
培養幹細胞治療は2014年に施行された「再生医療等安全性確保法」の規定の中で行うことができます。この“再生”という言葉から、過度の期待を持たれる患者様も少なくありません。私がインフォームドコンセントで大切にしていることは、特に進行期以降の変形性膝関節症に対する標準治療は手術療法であること、注入した幹細胞が傷んだ組織に直接生まれ変わるイリュージョン的な治療ではなく、幹細胞から放出される液性因子のはたらきかけに、ホストである患者様の組織や細胞が応えることで、修復作用を助けるものであり、根治治療ではないこと、治療が奏功しない場合、手術療法の適応となる可能性があることを、時間をかけてしっかり説明するようにしています。その上で誤解なく信頼関係を構築し、コンプライアンスの取れた状態で治療に入れるよう努めています。
必要な脂肪はおちょこ一杯分。患者負担に配慮した採取が可能に
——治療の流れについてお聞かせください。
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