『幅広い適応と確かな効果を持つカンナビノイド治療を広めたい』 杉野宏子先生
2019.12.23
近年、注目を集めているカンナビノイド。アメリカでは日本よりも一足先にカンナビノイドビジネスが盛り上がりを見せており、大手企業が続々と参入する様子は「グリーンラッシュ」とも呼ばれている。
そんなカンナビノイドの効能に一早く注目し、クリニックにも導入している杉野宏子先生(日本臨床カンナビノイド学会理事)に、カンナビノイドの効果や扱う際の注意点について、お話を伺ってきた。
不全を改善するエンド・カンナビノイド・システムとは?
人体には、本来地球上で生きていくための身体調節機能=ECS(エンド・カンナビノイド・システム)が備わっています。ECSは、食欲、痛み、免疫調整、感情制御、運動機能、発達と老化、神経保護、認知と記憶などの様々な機能を持ち、細胞同士のコミュニケーション活動を支えています。
脳内や神経の情報伝達には、内因性カンナビノイド(エンド・カンナビノイド)と、その受容体であるCB1、CB2によって構築されているエンド・カンナビノイド・システムが関わっています。免疫細胞にも同様のエンド・カンナビノイド・システムがあり、免疫システムのバランスを担っているのです。
内因性カンナビノイドは、必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸から作られます。カンナビノイド受容体であるCB1とCB2という2種類の受容体は、全身に分布しており、神経細胞に多いのがCB1受容体で、免疫細胞に多いのがCB2受容体です。
加齢や強いストレス下では、カンナビノイドが不足し、神経系や免疫の不調が現れると考えられています。(カンナビノイド欠乏症)
カンナビノイドを補うことで、この神経や免疫の不調を改善しようとするのが、カンナビノイド治療なのです。
カンナビノイドとはどのようなものなのか?
カンナビノイドとはヘンプ(麻、大麻草)から取れる生理活性物質の総称で、現在123種類の成分があることが判明しております。その中でも有名な成分が、THCとCBDの2種類です。
THC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)は酩酊作用を持っているのに対して、CBD(カンナビジオール)には酩酊作用がありません。
その酩酊作用から、現在日本ではTHC成分が混入している製品の取り扱いは禁止されております。その代わりに、酩酊作用の無いCBDは、エンド・カンナビノイド・システムを整えるために有効であるとして、期待されているのです。
WHOがカンナビノイドの広い適応を認定
WHO(世界保健機関)は、CBDに関して危険性の見直しを行い、乱用性または依存性がなく麻薬物質に該当しないと、その安全性を各国に勧告しました。大麻がタバコやアルコールよりも中毒性が低いというのはよく知られていると思いますが、WHOが正式にそのような声明を出したのは大きな意味があります。
WHOによるとカンナビノイドは、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、低酸素虚血障害、ハンチントン病、疼痛、精神病、不安、抑うつ、がん、悪心、関節リウマチ、炎症性腸疾患、心血管疾患、炎症性疾患、感染症、クローン病、糖尿病合併症など、さまざまな慢性疾患に効果があると推定されております。
またCBD入りの「エピディオレックス」という難治てんかん治療薬は、2018年にアメリカで認可を受けています。日本でも治験は可能であるという見解が国会で確認されましたので、同薬が一日も早く承認薬として認められ、多くの重症てんかんの患者様が救われるよう願っております。
杉野先生がカンナビに注目し始めたきっかけ
カンナビノイドと言われても、はじめは全く知識もありませんでしたし、どのようなものかも知りませんでした。学会で新垣実先生(日本臨床カンナビノイド学会理事長)にお会いする機会があり、その時にカンナビノイドの存在について伺うことができたのです。
海外ではカンナビノイドについての研究が進んでいるのに、日本では医学部で学ぶこともなく、医療従事者への情報もほとんど出回っていないのが現状です。
そこでカンナビノイドの勉強会に加入し、カンナビノイドの薬効の広さや難治性疾病にも効果が期待できるということを学びました。
さらに私のクリニックでも専門としている美容皮膚科や美容外科の分野でも応用できることを知り、「この有用な物質を日本でも、もっと自由に使えるようになれば良いのに」と思うようになったのです。
今では日本臨床カンナビノイド学会の理事として、カンナビノイドを広く普及する活動に従事しております。
クリニックでの販売は?
私のクリニックに来られる患者様の中には、皮膚の痒みや疼痛、不眠などを訴える方が多くいらっしゃいます。既存の治療法で十分効果の出ないような痒み、痛み、不眠であればCBDオイルの服用をおすすめすることがあります。
CBDオイルはフレッシュなものでないと、どんどん酸化してしまうので、クリニックに在庫を置かず、直接販売は一旦中止しております。しかし、販売業者が何社もあるので、信頼している業者さんを紹介して、患者様には直接業者からご購入いただくようにしております。
クリームについて、以前は院内で作成し、お分けしていましたが、作成が難しく現在は行っておりません。今後は、安定してクリニックでも提供できるように、CBD入りクリームを開発しているところです。
患者様からの反響は?
自費研カタログ関連商品
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