日本の国民病、肩こり。 頭痛・肩こりのボツリヌス治療の第一人者 が語るボツリヌス治療の理論と実践。連載第一回。 自費研online
2018.04.27
肩こりは日本人の国民病と言われるほど多数の患者がいる。外国では筋膜性疼痛症候群と呼ばれ、2000年頃よりボツリヌス治療が広がっているが、日本ではあまり普及していない。頭痛・肩こりのボツリヌス治療の第一人者である寺本純先生に聞いた。
1)肩こりの認識
『肩こり』の名称は夏目漱石が初めて用いたことばとする説があります。厳密には、肩とは肩関節周囲の部分を示しますが、肩こりは肩だけではなく、首さらには後頭部にいたる部分の『こり症状』を示すもので、『肩こり』の名称が適切であるかどうかという問題はありますが、現在では国民のほとんどだれもが共通に認識できる用語であり、かつ患者さんが示す症状を、医師のだれもが認識できる共通語になっています。しかし、外国では患者が訴える症状と医師が心得ている病名に差異があり、このことが『欧米人には肩こりがない』などと言われる原因ですが、決してそんなことはなく、用語の問題が背景になっているにすぎません。
2)肩こりの背景
肩こりの現象は、一般の人と医師との間で認識は共通している反面、背後にどんな病態があって肩こりが生じるのか、という点を問われると、いささか心もとない。背景として語られる病名・病態として、自律神経失調症、うつ、変形性脊椎症、身体表現性障害、ストレス、筋疲労、加齢、さらには高血圧症、高脂血症なども取り上げられることがあります。それらの病態が肩こりと若干の関連を有する場合があることを、頭ごなしに否定するつもりはありませんが、肩こり自体の病態に迫るものでなく、患者さんに対して説明した場合、その場では納得させることができたとしても、根本的には改善させることはできません。
3)肩こりを標的とした病名
肩こりを明確に含めた病名としては、バレ・リュウ症候群、頸肩腕症候群、緊張型頭痛、筋膜性疼痛症候群、頭頸部ジストニアなどがあげられます。これらの病名は、それぞれ視点が異なっており、またそれらの用語を使用しがちな科も異なりますが、いずれもが肩こりが症状の中心になっており、かなり共通の病名であることを認識しておくことが重要です。
4)外国では
これらの頸~肩さらには背中に広がる痛みについては、欧米では筋膜性疼痛症候群(最近では慢性筋膜痛と呼ばれる)と呼ばれることが多く、ボツリヌス治療の指南書にもこの病名で記載されています。筋膜性疼痛症候群は、肩周囲のみではなく腰部に現れることもあり、これを筋膜性腰痛あるいは low back painなどと呼びます。なお全身に分布する線維筋痛症と誤診してはいけません。
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