【自費導入完全ガイド】利益追求はご法度？医療機関と非営利問題

自費診療を導入しようと考えた時に、医師たちが戸惑うのはその情報の少なさです。コンプライアンスを遵守しつつ患者ニーズに応え、かつ経営を強くしていくための知識を、本連載でお伝えしていきます。
今回は自費導入にあたって気になる「医療と非営利」の問題について、齋藤健一郎弁護士に解説していただきました。

《目次》
・「医療機関は非営利」って本当？
・非営利＝「利益を追求しないこと」なのか
・個人診療所と非営利性
・物販は「営利目的」とみなされる？
・一般企業は診療所を経営できる？法的根拠は

「医療機関は非営利」って本当？

「医療は原則非営利だから、利益を追求してはならない」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。一部の地方自治体では過去に医療法人が利益をあげることに対して指導を行った事例もあるようですが、あまり一般的ではありません。

「医療が非営利」だという解釈の根拠としてよく引き合いに出されるのが、医療法の以下に抜粋した箇所です。

営利を目的とする場合には、たしかに「許可を与えないことができる」と明記されています。しかし、ここで言われる許可とは、医師または歯科医師でない者が診療所を開設するときのことを指しています。そもそも個人開設の診療所は許可制ではなく、届出制なので医療法第7条5項には該当しません。非営利の原則の対象となるのは、「医療行為」ではなく「医療法人」という主体を指しています。

非営利＝「利益を追求しないこと」なのか

医療法人が非営利を求められていることは分かりました。それでは「営利/非営利」の定義とは何でしょうか？

ここに明記されているのは「医業や歯科医師業で得た利益を構成員に分配すること」です。一般法人は、利益をあげることを活動の主たる目的としていますが、医療法人における「利益」は、より良い医療の提供という目的のための手段と考えられています。このとき、剰余金の使われ方によって、「営利/非営利」が判断されます。経営安定のために内部留保をする、設備投資やスタッフ教育に使う、などはもちろん可能です。株式会社のように上がった利益を配当として使用することが禁じられている、ということがこの条文の解釈として一般的だと考えられています。もちろん、給与の支払いは利益分配には該当しません。

注意すべきポイントとして、「配当に類似する行為」として考えられるのが以下のような事例です。

個人診療所と非営利性