医師だけが知らない 患者さんのクレーム vol.2
2018.07.10
医療に関することで、どこに相談したらよいかわからず困った時などの保健所の窓口、「患者さんの声」。職員が話を聞き、必要に応じて関係相談先を案内する仕組みである。この「患者さんの声」相談員を務めた医療ジャーナリストが、医療機関へのクレームの実態を明かす。連載第2回。
「院長に『忖度する』クリニック」
たびたび患者さんの怒りをかっているクリニックがあります。その診療領域では知名度が高く、患者さんも最初は「こんなに予約が取れないなんて、やはり有名な先生は違うわね」「ここに来て良かったわ」と満足していました。サプリメントも何万円と買っています。家族の忠告、進言などは聞かないのに院長の言いつけは守ります。ところが、スタッフの「お決まりの一言」を契機に、患者さんが不満と怒りを爆発させることになるのです。
このクリニックに寄せられる苦情内容はみな同じ。「院長にきいてみないとわかりません」というスタッフの一言です。
次回予約、予約変更、痛みや病状悪化に不安がつのるとき、どのようなときでも、そして看護師、受付職員のどちらが応対しても、返答は判を押したように「院長にきいてみないとわかりません」。このクリニックにはケースバイケースの接遇は存在しません。「院長への忖度」ありきです。
憔悴したような患者さんから同クリニックへの苦情が寄せられたことがあります。「痛みが増し、受診を早めたいとクリニックに電話した。いつもと同じで『院長先生にきいてみないとわからない』と言われた。院長から予約を変更して良いとの返事がきたのは3日後だった」というものでした。
患者さんからすると「有名で忙しい先生に電話をかけるのは申し訳ない」と遠慮と我慢が限界に達した上での電話でした。痛みで脂汗を流す中3日も放置されました。最初の期待値とサプリ代が高かった分、怒りも相当なものです。患者さん相談窓口だけでなく、区役所の消費生活センターや地元医師会、友人知人にもクリニックへの不満と怒りをぶちまげていると見るべきでしょう(前回書いたようにこうした苦情は原則としてクリニックにフィードバックされません)。
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