
クリニックを強くする人材マネジメントのツボ
2017.11.15
知らないと痛い目にあうスタッフの残業代対策。法に則った環境整備5つのツボ
- ・ スタッフが時間外労働をした場合、クリニックは残業代を払う必要がある
- ・ 給与設定を基本給+固定残業代とすることで、一定時間までの残業代をインクルードできる
- ・ 始業前の準備も基本的には労働時間に含まれるべき。長時間にならないように注意する
- ・ タイムカードの押し方を指導することで不用意な残業代を減らせる
- ・ 歩合制の場合でも、労働時間外は25%以上の割増賃金となる
つい後回しにしがちだが、実は大変な起爆剤となりえる「スタッフの残業代問題」。残業代が欲しいと訴えるスタッフに、“給与に含まれているから”などと安易に発言したりしていないだろうか? もし事実でない場合、ある日突然、労働基準監督署からの通達を受け、面倒な事態に巻き込まれてしまう可能性がある。
「医師は、残業代なしの長時間勤務が当たり前の世界にいらっしゃるので、つい皆も同様と考えてしまいがちです。しかし、スタッフに残業をさせた場合は、いかなる理由があろうとも残業代を払う必要があります」と話すのは、クリニック経営に詳しい、辻・本郷 税理士事務所の社会険労務士である玉置千奈津さん。
しかしながら、あらゆることに支払っていてはクリニックの経営も厳しくなる。まずは、給与の設定を見直すのが有効だという。
「例えば、残業代を含めて月20万円の給与としたい場合、17万2千円を基本給と定めて、2万8千円を20時間分に相当する固定残業代とするのはどうでしょうか。1ヶ月の残業時間が20時間を超えた場合は別途支給するようにします」
当然、きちんと時間管理をし、固定残業代は給与の時給換算×20時間よりも高く設定しておく必要があるが、これにより残業代は基本給に含まれた形になる。また、20時間以上の残業があれば、相応に支給されるとなれば、スタッフも納得してくれるのではないだろうか。
このとき押さえておきたいのは労働基準法で定められた労働時間だ。基本的に日本での労働時間は、「休憩を除いて1日8時間、1週間40時間」と定められている。これを超える時間が残業になるのだが、時間外勤務に関しても限度時間が定められている。
1週間 | 15時間 |
---|---|
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1ヶ月 | 45時間 |
2ヶ月 | 81時間 |
3ヶ月 | 120時間 |
1年 | 360時間 |
ちなみに、育児や介護に従事する人の場合は特別要件があり、それぞれ上記より短い時間が定められている。
それでは、始業前の勤務についてはどうだろうか?
クリニックによっては、掃除や救急カートのチェックなど、始業時間となる申し送りの20分前から作業することが義務付けられているところもある。
「看護師の仕事は専門性が高く、準備が必要なので、ある程度は仕方がないと思いますが、本来は労働時間内にやるべき内容。あまり長くなってはいけません。始業前の準備が1時間を超えるような場合は時間外労働の対象になります」
始業前の労働状況にも気を配る必要があるようだ。一方、不用意な時間外労働を増やさないために、クリニック側ができる取り組みもある。
「タイムカードで勤務時間管理をしている場合、全員が終わるのを待って、スタッフ一緒にタイムカードを押したり、誰かがまとめてみんなの分のタイムカードを打刻したりしている姿を見たことはないでしょうか? そのような場合は、仕事が終わった人は速やかに帰ること、自分で自分のタイムカードを打刻することを、経営者がスタッフにしっかり指導する必要があります。
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