自費研フェス
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データビジネスから考える、自費診療の未来

データビジネスから考える、自費診療の未来

2021.10.14

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「データとICTを使って持続可能なヘルスケアシステムを実現する」をミッションと掲げる「株式会社JMDC」。株式会社JMDC代表取締役社長兼CEOの松島陽介氏に、ビックデータを活用した現在の事業から日本の医療が抱える課題、「自費研フェスティバル2021」登壇テーマである「これからの医療×DX,IT,ヘルステックプラットフォーム」などについて、医療従事者へ向けたお考えを伺いました。

医療ビッグデータ解析のパイオニア「株式会社JMDC」とは

――まず、株式会社JMDCとはどんな会社なのか、ビジネスモデルや事業概要を自費研会員の先生方へご説明いただけますか。

健康保険組合から、その組合員である企業で働かれている方やそのご家族のレセプト(診療報酬明細書)や健診の結果をタイムリーにお預かりして、分析、データベース化しています。昨今、健保組合は医療費を抑制するために組合員の健康増進に取り組むよう国から要請されており、そのためにはデータを分析し、対策を立てる必要があります。そこで私たちがデータ分析を行い、各組合員の方の中でどういう方が健康上のリスク抱えているか、またその方にどういう働きかけをしていくべきなのか分析する保健事業のサポートを進めています。これが弊社の事業の大元(おおもと)です。

近年は健保組合のサポートと並行して、組合員の方にダイレクトに情報を提供させていただくPep up(ぺップアップ)というPHR(パーソナルヘルスレコード)プロダクトを開始しています。これは組合員の方一人ひとりに対して健康状況の報告、アドバイスや、活動量計などのデバイスを利用して運動状況を把握し、一人ひとりが健康へのリテラシーを高めることができるようにするサービスです。

現在、弊社は健保組合を通じて1000万人にも及ぶ社会生活者のヘルスデータをお預かりしています。この1000万人の膨大なデータを匿名加工し、研究機関や製薬企業、生損保会社などに提供し、医療の発展に資する健康増進のサービスや新しい薬剤の開発・上市、などに活かしていただいています。

加えて、医療機関、調剤薬局、国保のデータや事業主が持っている勤労のデータなどを集積し、様々な観点からヘルスケアに対してデータでアプローチし、生活者のヘルスリテラシーの向上と医療機関における最適な医療サービスの提供に役立てていただいております。

「理解しやすい=価値が高い」データ

――「データビジネス」を扱っている企業との差別化についてお伺いいたします。成功のカギは何だと思われますか。

データが価値を持つと言われて久しいのですが、実はデータビジネスで成功する企業はそれほど多くありません。原因の一つは、「事業化に適したデータであるか否か」ということだと思います。

データは意思決定の質を高めるために使用されますが、データがなくても意思決定はこれまでもしてきたことなので、データを使ったことがない人にとって、データの価値はわかりづらい。単なる数字の表れとも言えるデータを活用して意思決定の質を高めるためには、ユーザー側のリテラシーが必要です。反面、供給者側はデータの内容が細かすぎたり、マニアックすぎたりとデータを扱う双方にギャップがあることが多いように感じます。

弊社では、レセプトデータや健診データを扱っていると言うと、電子カルテなどもっと医療の実態に迫るものが必要だろうと言われることがあります。それはもちろんその通りであり、それらのデータも蓄積しておりますが、実際に事業として広がっているのは、レセプトデータや健診データといったフォーマット化されて使いやすく、何よりユーザーが理解しやすいものです。データが理解できる、すなわちリテラシーを持ったユーザー数が多く、かつデータに希少性があること、これが価値の高いデータの要件です。

――保険領域と自費領域でデータの差や違いなど、お感じになりますか。

今の段階では自費診療はレセプトデータには現れませんが、私個人としては、今後、自費診療はますます広がると思っており、自費診療の領域も新しいデータを収集していく意味は大きくなっていくと考えております。

医療費の支払い手(ぺイヤー)であるじつは保険者(健康保険事業の運営主体)にとって、実は自費診療であるか保険診療であるかは、あまり重要ではありません。そもそも70%負担している保険者が自費診療として100%負担することになっても負担としては1.4倍程度です。その医療が必要なタイミングに提供されるなら、その場は1.4倍になっても将来的な医療費は抑制できるなら十分に受け入れ可能だと思います。保険者は、未病も医療も連綿とした一体としてみていて、保険収載されてからが医療、といった考えには縛られていません。その人に必要な支援を適切に行うことが大事、という考え方は広がってきています。

具体例を挙げるとすると、糖尿病で薬を飲んでいらっしゃる方がいたとします。かかりつけ医で処方してもらっている薬の効きが悪くなり、透析を考えないといけなくなった。ここで保険者としては、かかりつけ医だけではなく、糖尿病の専門医にもアドバイスをしてほしいと考えます。しかし、専門医は人数が限られていて近所にはいない、医師側も手間に対してもらえる保険の点数が少ないなどの問題があります。専門医の最新の知見に基づく指導で、透析までの期間を3〜5年伸ばせる可能性があるとするならば、本人にとってそれがいいことであるのはもちろん、健保組合にとっても年間500万かかる透析費が3〜5年削減できることになります。かかりつけ医にとっても専門医の知見を参考にできることはメリットがあり、抵抗は多少あるが患者さんが戻ってくるなら理解が得らないということはない。こういった予防医療を自由診療という枠を使って、個人ではなく保険者が数万円以上指導料を専門医に支払う、こういう考え方は弊社の取引健保組合のなかでも広がってきています。

今の保険制度は大変優れていますが、保険診療か否か、という本来お金の流れであるはずのものがすべての判断の最初に来る。患者にとって何が必要か、それが保険か否かはそのあとの話、医療側が予防医療についても自由診療という枠を使えると予防の概念が普及して、結果健康増進になるのではと思います。

健康に対する意識の変化が医療費抑制の貢献材料に

――2025年問題などもありますが、ヘルスケア分野、ITを使っていくことに対して、医療従事者や患者側のニーズはどのように展開していくと思いますか。

保険者からするとデバイスを使うことで、個人の健康意識や行動に変化が生じ、医療費が抑制できることで投資対効果が叶うのであれば、デバイスを負担するといった考えが広がってきています。弊社もそれに対するサポートをしていますが、実際、デバイスをつけるのとつけないのでは健康に対する意識が変わり、健診の結果にも変化が出るなど医療費抑制につながっている実感があります。

医療機関側は、2025年問題と言ってもそこまでひっ迫感はないかもしれません。多忙なこと、またエビデンスがまだ確立していないこともあり、デバイス診療などは後回しになりがちです。ただ、デバイスは患者の日常生活を知るうえで非常に有益ですし、問診や画像診断に加え、デバイスによるバイタルデータを参考に診断し指導につなげていくことは一部ですでに始まっています。今後も、保険診療や自費診療に関わらず、その方に必要なことを提供したりしていく柔軟性が備わってくれば一気に広がってくる気がします。

「データとICTを使って持続可能なヘルスケアシステムを実現する」実現のために

――今後のお取り組みや研究、ビジョンについてお聞かせください。
我々は、「データとICTを使って持続可能なヘルスケアシステムを実現する」ことをミッションとしていており、それを実現していきます。その中で医療費の問題をどう解決するのかという課題は外せません。どれだけ投資すればどれだけ医療費を下げられるかということを支払い側が理解して、医療費としてだけでなく、様々な払い方をすることで、行動変異をおこし結果的に医療費が維持していくような状況を作られればと思います。

加えて医療費を抑制するためには患者さんと医療従事者との向き合いを最適化することが必要です。そのためには患者さんは自分の健康状態やリスクを知り、最低限の知識を持った上で、正しい予防行為や医療行為を自ら選択できるようにしないといけない。医療従事者側は業務効率を上げて、規定されている医療の枠組以外にも保険診療か否かに関わらず、最適な行為をしていけるといいと思います。

そして我々は、どんな患者さんにどんなリスクがあるのか、そのリスクに対して何をしていけばいいのか、これまでのケースをデータとして情報提供することで、そのお手伝いができればと考えています。

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【取材協力】
株式会社JMDC
社長兼CEO
松島陽介 氏

1995年 第一生命保険入社。2001年 A.T.カーニー入社。
2005年 マッキンゼー&カンパニー入社。
2013年 ノーリツ鋼機 副社長、JMDC取締役を経て、
2018年4月 JMDC代表取締役社長兼CEO就任。

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