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クルクミンに抗がん作用?飲む抗がん剤実用化を目指して 後編
2020.07.07
クルクミン類似体から副作用の少ない抗がん剤開発を目指し研究に取り組む、奈良先端科学技術大学院大学の加藤順也教授。前編では、がんを細胞死へ、正常細胞を元気に導くクルクミンのはたらきについてお話いただきました。創薬に向けて、どのような課題があるのでしょうか。
——お伺いしていると、クルクミンは良いことづくめだと感じます。
クルクミンにも欠点が見つかりました。抗がん効果を得るにはとにかく大量に摂取しなければならないのです。その量は”精製した”クルクミンで1日あたり8g。ターメリックにおけるクルクミンの含有量から計算すると、カレー150杯相当、という量だったんです。ならばクルクミン以上の働きをする類似物質を探そうと、幸運にも見つかったのがPGV-1でした。働きは最大でクルクミンの約100倍なので、カレーで考えると1日1.5杯。やっと現実的な数値になりました。
——「幸運にも」ということですが、PGV-1の発見は偶然の産物だったということでしょうか。
世の中では「努力は必ず報われる」などと言いますが、研究ほど報われるまでかなりの量の努力が必要とされる世界はないのではと思います。1000に1つでも“十分報われた”と言えるのではないでしょうか。実験やデータ解析は、経験からある程度の予測をたてて行いますが、それでも狙ったとおりの結果が得られることはなかなかありません。
今回の発見は、私たちだけでは到底得られなかった成果です。インドネシアの共同研究者や、国内外の分子細胞生物学、有機合成化学をはじめとした様々な分野の専門家との共同研究により、現実的に摂取可能で抗がん作用を持つPGV-1にたどり着くことができました。
▲クルクミンと似た反応基を組み合わせて結合させた化合物群を対象に、ヒトがんに対して有望な候補化合物を選別。
データ解析の過程で、クルクミンの5~10倍ほどの効き目を持つ化合物はいくつか見つけられたのですが、マウスで実験してみると、その結果はクルクミンと大差ないものになってしまうのです。PGV-1の抗がん作用は、クルクミンの60~100倍。さらに腹腔内注射のクルクミンとは違い、経口投与でもがん細胞の増殖を抑えらました。PGV-1には、飲み薬としての実用化が期待できるということになります。
▲各所との共同研究により、「PGV-1」を発見。
——創薬というゴールを目指して、これから課題となるのはどのようなことでしょうか。
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