高須克弥が語る「医療の本流と医道」ーー次世代の医師たちへ告ぐ
2026.10.01
日本の形成外科・美容医療の礎を築き、長年にわたり業界を牽引してきた高須克弥院長。医療の領域にとどまらず、社会のあり方に対しても率直な発言を続け、常に大きな一石を投じてきた。その言葉の底流にあるのは、一人の「医師」として愚直なまでに積み重ねてきた圧倒的な経験と知見だ。今なお第一線で執刀し続ける高須院長に、変質しつつある医療の現在地、そして次世代を担う医師たちへ伝えたい「あるべき医道」について聞いた。
「安易な領域」へ逃げるな。医師の本分は学びと技術の研鑽にある
医療の歴史から見る、身体にメスを入れるということの意味
いまの美容医療業界を見ていると、どうも歴史の針が逆回転している、つまり「先祖返り」しているように感じますね。
そもそも医療の本質とは、病み、苦しむ人間を救うことにあります。歴史を振り返れば、かつて日本やヨーロッパでは、薬を調合する内科医が医療の中心であり、身体を切ったり貼ったりする外科医は相対的に低い扱いを受ける時代もありました。外科の中でも、脳外科や心臓外科のように生命に直結する分野が重んじられる傾向があったのも事実です。そうした流れの中で、病気でもない健康な身体にメスを入れる領域は、他の診療科とは全く異なる特殊な覚悟を要するものでした。
かつての先人たちは、その特殊性を誰よりも自覚していました。だからこそ「悪くもない身体に傷をつける」という、ある種の背徳感すら伴う行為を真の「医療」として昇華させるために、人一倍勉強し、凄惨なまでに腕を磨き、社会に認められる努力を重ねてきたわけです。立派な気概を持った医師たちがたくさんいました。
ところがどうでしょう。急激な市場拡大に伴い、業界全体が再び浅はかな方向へと逆戻りしているように感じます。十分な臨床経験や下積みを経ないまま、目先の手軽さや利益に惹かれて現場に出てしまう若手医師が増えている。わずかな見学程度で現場に立ち、自分は一人前だと錯覚してしまうのは、あまりにも危険な傾向です。
システムに消費され、使い捨てにされる若手医師たち
非常に残念なことですが、現在の美容医療業界には「儲け」だけを目的としたクリニックが存在しています。医師になって最初にそうした環境に身を置いてしまうと、医師として必要な体系的知識や技術を身につける機会は永遠に失われます。
注射一本、注入ひとつできた程度で「自分は美容医療の専門家だ」と安易にプロ気取りをし、本物の外科技術を何一つ持たないまま現場に出てしまう。これでは「匠の技」など磨けるはずがありません。 高級料亭の厨房に何十年いても、皿洗いしかさせてもらえなければ一流の料理人になれないのと同じです。ビジネスの仕組みに組み込まれ、都合よく消費され、使い捨てにされていく。若い先生方には、手遅れになる前に一度立ち止まり、医師としての学びを根本からやり直してほしいと思います。
私が専門とする形成外科の立場から言わせてもらえば、美容医療が診るのは「病気ではない人間」です。つまり、そこで起きた予想外のトラブルは、医学上の「合併症」ではなく、単なる「失敗」なのです。
私は形成外科専門医として、他院で起きた不細工な失敗を幾度となく修正してきました。その中で「絶対に失敗しない美容外科」の確立を目指してきた経緯があります。かつて日本の形成外科・美容外科技術はアジアを圧倒的にリードしており、韓国や中国で美容医療が発展する際にも、私が現地へ赴き助言をして本格化させた歴史があります。国内でも日本美容外科医師会の会長や学会要職を務めてきましたが、「美容に向かう前に、まず医師としての幅広く深い素地をつくれ」という私の主張は、昔も今も一貫して変わりません。
患者に寄り添い、献身的に尽くす——それが「医道」だ
逃げの選択ではなく、高度な技術に挑み続けよ
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