「コラーゲン再生」を美容医療にどう活かすか インターナショナルな視点から見るバイオスティミュレーターの現在地|AMWC Japan 2026
2026.10.01
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近年、美容医療領域で注目が高まるバイオスティミュレーター。一方で、結節をはじめとする有害事象への懸念から、導入に慎重な医師も少なくありません。2026年9月12日に開催された「美容医療・アンチエイジング国際学会 AMWC Japan 2026」では、Nordberg Medical Japan株式会社共催によるランチョンセミナー「美容再生医療:コラーゲン再生の新時代」が開催されました。
本セミナーでは、JUN CLINIC銀座 院長の津田智子先生を座長に迎え、香港を拠点に長年にわたりさまざまなバイオスティミュレーターを臨床で使用してきたレイモンド・ウー医師が登壇。生体材料の基礎から、製剤を評価する際に押さえておきたいポイント、結節リスクと注入手技、患者選択まで、バイオスティミュレーターを臨床に取り入れるうえで重要となる考え方を解説しました。

バイオスティミュレーターは「成分名」だけでは評価できない
バイオスティミュレーターと一口にいっても、その特性は製剤によって異なります。現在、美容医療ではPLLA、PDLLA、PCL、CaHAなど、さまざまな生体材料が使用されています。しかしウー医師は、成分名だけで製剤を評価するのではなく、粒子の「形状」「サイズ」「密度」まで確認することが重要だと説明しました。
なぜ、こうした違いを見る必要があるのでしょうか。
バイオスティミュレーターを注入すると、組織内では異物に対する反応が起こります。その際、粒子の形状や大きさ、密度、さらに分解のされ方によって、炎症反応や組織内での挙動が変わる可能性があります。例えば、表面が不整な粒子では炎症反応が強くなる可能性があります。一方で、分解が速すぎれば線維芽細胞への刺激が十分に続かず、反対に長期間残りすぎることで、過度な炎症や肉芽腫形成につながることも考えられます。
つまり、バイオスティミュレーターを考えるうえで重要なのは、単に「どれだけコラーゲンを増やせるか」だけではありません。どのような炎症反応が起こるのか、どの程度の速度で分解されるのか、線維芽細胞へどのような刺激が加わり、組織修復がどう進んでいくのか。そこまで含めて理解する必要があります。
講演では、その組織反応を考えるうえで、マクロファージのM1/M2についても触れられました。M1は炎症反応に、M2は組織修復やコラーゲン産生などに関与するとされます。実際の生体反応は単純に二分できるものではありませんが、ウー医師が示したのは、「強い刺激=良い治療」ではなく、組織反応をいかにコントロールするかが重要という考え方です。製剤を選択する際には、成分名だけを見るのではなく、粒子設計や分解特性、その後に起こる組織反応まで捉えることが求められます。

結節リスクを減らす鍵は「製剤特性」と「注入手技」の両方にある
セミナー後半では、バイオスティミュレーターで特に懸念される「結節」について、臨床上の注意点が解説されました。ウー医師は、結節の発生には大きく分けて、製剤そのものに由来する要因と、注入手技に由来する要因の双方があると説明しました。製剤側では、粒子の凝集や形状、分解特性などが関係します。一方、施術者側では、狭い範囲への集中注入、注入量、注入層などが影響します。
ここで重要になるのが、ヒアルロン酸フィラーとの違いです。
ヒアルロン酸フィラーは、注入によってボリュームを補い、形態を整える目的で使用されます。一方、バイオスティミュレーターは、線維芽細胞への刺激を通じて、時間をかけて組織の変化を促していく治療です。そのため、フィラーと同じ感覚で局所へボーラス状に置くのではなく、目的に適した層へ、広く均一に分散させるという考え方が重要になります。
講演では、顔面側方など治療目的に合ったエリアを中心に考えることや、注入する層を適切に選択することも紹介されました。さらに、患者選択も欠かせません。治療前の診察で皮膚や皮下組織の状態を確認し、その患者がバイオスティミュレーターによる治療に適しているかを見極める必要があります。また、バイオスティミュレーターは即時的なボリューム形成を目的とする治療ではないため、「すぐに大きな変化を得たい」という患者とは、あらかじめ期待値を調整することも重要です。
そして、バイオスティミュレーター単独ですべての悩みを解決するのではなく、必要に応じてヒアルロン酸フィラーやエネルギーベースデバイスなどを組み合わせる治療設計も紹介されました。新しい製剤を導入する際には、製品名や成分だけを見るのではなく、生体材料の特性、注入方法、適応患者までを一体として理解することが重要です。

【インタビュー】日本でバイオスティミュレーターを安全に普及させるために
セミナー終了後、ウー医師に、日本でバイオスティミュレーターを普及させていくうえで必要な考え方について聞きました。
――Q. 日本ではPLLA・PDLLA製剤に対して、結節などへの懸念から慎重な印象もあります。海外ではどのように捉えられていますか?
ウー医師:結節への懸念は日本だけのものではなく、世界共通の課題です。私が香港でバイオスティミュレーターを使い始めた約15年前も、今の日本と似た状況がありました。当時はフィラーと同じような感覚で局所に注入したことで、結節を経験するケースもありました。結節には製剤そのものの特性と、施術者の手技の双方が関係します。だからこそ、局所へ集中させず、適切な層へ広く均一に分散させるという考え方が重要になります。

――Q. 日本でバイオスティミュレーターを安全に普及させていくためには、何が必要だと考えますか?
ウー医師:まず必要なのは、使用する製剤の特性を十分に理解することです。同じ成分名であっても、粒子の形状やサイズ、密度、分解特性は異なります。そのうえで、製剤ごとに推奨される調製方法や濃度を守り、注入部位を慎重に選ぶことが重要です。特に経験が少ない段階では、リスクや難易度の高い部位への使用から始めるのではなく、まずは安全性を重視した部位や症例から経験を積んでいく必要があります。バイオスティミュレーターは、単に新しい製剤を導入すれば成立する治療ではありません。製剤の特性を理解し、適切な注入手技を身につけ、患者を見極めること。その積み重ねが、安全で安定した治療につながります。
美容医療で「再生」という考え方が広がる今、重要なのは単にコラーゲン産生を促すことではありません。組織がどのように反応するのかを理解し、その反応をいかにコントロールするか。バイオスティミュレーターの選択肢が広がるほど、その背景にある生体材料の特性と臨床手技を正しく理解することが、これまで以上に求められそうです。

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