林田 康隆先生｜患者と細胞への負担を考え、慎重に、丁寧に——私がダイオードレーザー脂肪採取システムを扱う理由

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眼科領域で再生医療の基礎研究に取り組まれてきたY’sサイエンスクリニックの林田康隆先生。専門機関で培われてきた知見を活かし日々の診療にあたる林田先生に、ダイオードレーザーアシスト脂肪採取システムや、今後の再生医療に対する期待について語っていただきました。

兄姉の存在と芸術への強い憧れ

積み重ねてきた研究を社会に還元したい

姉の紹介で臨床から研究の世界へ飛びこみ、再生医療と出会いました。大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二先生（現大阪大学大学院眼科学教授）とともに角膜上皮幹細胞を使った眼表面の再建、幹細胞研究に没頭、その流れでアメリカフロリダ州のマイアミ・オキュラーサーフェスセンターへの留学の機会をいただきました。再生医療に関する知見はもとより、研究においていかに良い仮説を立てるかの重要性、そして日々そのことしか考えないという環境の中でとにかくやりきる姿勢の大切さを学びました。帰国後は臨床研鑽の後、再生医療・幹細胞に関するトランスレーショナルリサーチ（橋渡し研究）に携わりました。

気付けば臨床経験よりも研究の方が長くなっていました。研究活動にやりがいを感じながらも大学を辞める決意をしたのは、これまでの蓄積を社会に別の角度から還元できなか？という気持ちが強くなったからです。

再生医療には可能性がある。しかし万能ではない

日本のように、民間でこれほど再生医療が扱われている国は世界を見ても珍しい。しかし、「再生医療」や「幹細胞」と聞いた時に、「万能な治療だ」とイメージしてしまう人は少なくありません。まだ明らかになっていないことも多い反面、そこに確かな可能性があるからこそ、正しい知識として世に広まってほしいと思っています。

より幹細胞性の高い多能性(Pluripotent)とも言えるES細胞には倫理的な問題が、そして今世紀最大の偉業とも言えるiPS細胞はまだまだ民間での使用には多くの課題があり、患者様がイメージされる再生医療と、現実の再生医療にはギャップがあるのが現状です。
現時点で、適切な順序を踏むことでクリニックでも使用できるのが、脂肪や骨髄由来の組織幹細胞です。これらは「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞で、全２者が多能性と言うならこれらの組織幹細胞はより限定的な多能性 (Multipotent：多分化能)と呼べるかと思います。これをソースとした治療に期待が寄せられ、古くから様々な研究が行われています。

医師の技量に左右されにくい脂肪採取法が必要だった

阪大時代に内分泌系の前田和久准教授と共同研究をしており、チューリップ針による脂肪採取を行ってきました。この方法は術者の技量や経験によって採取した細胞の質が変わったり、患者様の術中術後の合併症に大きく影響したりするという課題がありました。患者様の身体をお預かりするのだから、できる限り負担を抑えながら質の良い脂肪採取の方法がないものかと思っていました。細胞は意外に強いのですが、反面幹細胞研究においてその質を考えるとき、そのソースとなる組織の選別や取扱いは結構繊細で、乱雑に扱ったり、時間がかかればその質は格段に下がってしまうことが危惧されます。
プロトコルを模索していた時に出会ったのが、ダイオードレーザーアシスト脂肪採取システム。日本国内での導入第一号が当院だったそうです。