FDA承認薬で、乳がん細胞を無害な脂肪へ変化させることに成功
2019.08.20
スイスのバーゼル大学は、米食品医薬品局(FDA)の承認薬によって、悪性の乳がん細胞を脂肪にかえることに成功したと発表した。
がんの転移に深く関わるとされる、上皮間葉転換(EMT)と間葉上皮転換(MET)。今回の研究では、このメカニズムを応用することで、乳がん細胞を脂肪へと変容させたという。
上皮間葉転換(EMT)とは、細胞と細胞の間に強い結合がある上皮細胞がその機能を失い、ばらばらになりながら運動性の高い間葉系細胞へと変異するプロセスを指す。
反対に、間葉上皮転換(MET)は、運動性の高い間葉系細胞が、細胞間の結合を強めることで、塊になる現象のことである。
がん細胞は細胞間の結びつきを失い、周囲の細胞を壊しながら進むEMTと、一度ばらばらになった細胞が転移巣で塊になるMETを繰り返しながら増殖していくのである。
この研究では、EMTやMTEが進行している細胞は可変状態にあるという性質を利用したのだ。乳がん細胞を移植したマウスに、抗がん剤『トラメチニブ』と抗糖尿病薬『ロシグリタゾン』の2薬剤を投入。その結果、マウスの乳がん細胞が脂肪へと変化しただけでなく、転移も防げたという。
可変状態であるがん細胞に対して、『トラメチニブ』が幹細胞への変化を促し、『ロシグリタゾン』が幹細胞から脂肪への転換を促したのだという。
研究を行ったゲルハルト・クリストフォリ教授は「この新種の治療法は、将来、従来の化学治療と組み合わせて原発性腫瘍の増殖や致命的な転移を抑制するのに応用できる可能性がある」と述べた。
2018年、乳がんと診断された患者数は世界で210万人。日本だけでも年間6万人以上が乳がんと診断されている。この実験はFDAの承認薬を用いて行われているため、ヒトでの臨床実験が行いやすく、効果が期待できるのではないかと、関心が寄せられている。
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