うつ病のTMS治療
2018.08.01
うつ病を対象とした経頭蓋磁気刺激治療(TMS)機器を厚労省が承認。
新たな選択肢となるか。
厚労省が、2017年7月にうつ病を対象とした磁気刺激治療(TMS)機器「ニューロスター」を含む2品目を承認した。厚労省によると、2014年時点の日本のうつ病患者は推計111万人を超えており、産業医学の分野でも労働者のメンタル不調が企業にとって大きな問題となっている。
うつ病治療は、第一選択である抗うつ剤の投薬治療で効果が不十分な場合は、複数の薬剤の併用や、電気けいれん療法が採られる。投薬治療では全身性の副作用、電気けいれん療法では認知障害などの副作用が問題となっている。そこで注目されているのが、全身性の副作用のない治療、TMSである。
大うつ病に罹患している患者の脳は、大脳皮質の前頭前野背外側の血流が低下し、グルコース代謝レベルが十分ではなく、辺縁系の活動が亢進していることがわかっている。1)2)3) TMSはうつ病により機能が低下している前頭前野背外側のみに作用するので、全身性の副作用は発生しにくい。TMSは、0.1%未満だが痙攣リスクがあるので、てんかん、頭部外傷の既往などを聞き、痙攣のリスクが高い場合はTMSの治療対象外とする。
TMSはMRI(磁気共鳴画像検査装置)と同様の、高度に集束されたパルス磁場を利用し、大脳皮質に微弱な渦電流を発生させ、ニューロンを刺激する非侵襲的な治療である。前頭前皮質に少量の電流が誘起されると、局部ニューロンが脱分極、シナプス経由で脳深部構造を活性化する。 活性化された脳の領域での血流量および糖代謝が増大し、その結果、気分が改善するしくみである。4)5)
うつ病治療では,左背外側前頭前野への10~20Hzの高頻度刺激で皮質興奮性を増強する方法と、右背外側前頭前野への1Hzの低頻度刺激で皮質興奮性を抑制する2つの方法がある。どちらの方法も、複数の二重盲検ランダム化試験(RCT)で抗うつ効果が実証されている。2008年にFDAの米国で行われた臨床研究では、900名の患者のデータが集められており、3人のうち1人が寛解、2人に1人が改善するという結果も出ている。6)
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